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聖句が覚えられないのは、記憶力のせいではない

毎日ちがう聖句を読むのは、覚えるという目的から見ると、考えうるかぎり最も不利な並べ方です。忘却曲線、「見覚え」と「思い出せる」の違い、そして実際に回るやり方。

聖句を覚えようとしたことのある人は、たいてい同じ経験をしています。その週はうまくいったのに、三週間後に思い出そうとすると、半分と、だいたいの意味しか残っていない。そして「自分は記憶力が悪い」、もっと悪くすると「熱心さが足りない」という結論に行き着きます。

どちらもたぶん違います。原因は多くの場合やり方のほうにあって、多くの人が自分に課している練習は、記憶がいちばん苦手とする形をしています。

先に断っておきます。このページは学習の話であって、効能の話ではありません。聖句を覚えると気分や睡眠や体調がどうなる、という主張はしませんし、それは軽々しく約束してよいことでもありません。ここで扱うのは、ある文章を数か月後にもまだ持っているにはどうするか、という地味な話だけです。引用は King James Version(パブリックドメイン、このアプリに収録されている訳のひとつ)を英語のまま挙げ、意味は日本語で説明します。

なぜ「毎日ちがう一節」が不利なのか

一日一節への反対ではありません。ふたつの別のことだ、という話です。毎日ちがう一節は「触れること」で、文章を長く記憶に置くのは「練習」です。この二つの最適な並べ方は、ほとんど正反対になります。

忘却には形がある

記憶についていちばん頑健に観察されてきたのは、新しく覚えたことは最初の一日か二日でいちばん速く落ち、そのあとは落ち方がゆるやかになる、という形です。十九世紀末のエビングハウスの自己実験以来くり返し記述されてきましたが、具体的な数値は実験ごとに大きく違います。素材に意味があるか、リズムがあるか、その言語にどれだけ慣れているかで、曲線そのものが別物になるからです。ですから percentage を真に受ける必要はありません。覚えておく価値があるのは形のほうだけです——復習すべき時点は、落ちきる前、落ちかけているときです。

毎日新しい節に替えるということは、どの節も曲線のいちばん高いところで一度会って、そのあと二度と戻らない、ということです。落ちるのは当然で、熱心さとは関係ありません。

「見覚えがある」は「思い出せる」ではない

これがいちばんよくある自己欺瞞で、しかも感覚では気づけません。本文を目の前に置いて読むと、「もう覚えた」という非常に強い感覚が生まれます。その感覚は再認から来ていて、想起から来ていません。別々の能力で、生活で必要になるのはいつも後者のほうです。

確かめ方はひとつだけです。画面を伏せて、何も見ずに言ってみる。はじめてこれをやると、たいていの人は驚きます。その落差は悪い知らせではなく、実力が見えただけです。

読み返しは、いちばん効率の悪い練習

読み返しが流行るのは、単に楽だからです。負荷がなく、しかも読むたびに「できている」という錯覚が強くなります。ところが記憶に刻むのは、頭の中から引き出すという動作のほうです。思い出せない、詰まる、三秒がんばってやっと出てくる——その三秒が練習の本体です。

つまり「もう何回か読む」と「伏せて言ってみる」は、同じ時間を使っても効き方が違います。何十回も読んだのに覚えていない人は、たいてい楽なほうの半分だけをやっています。

実際に効くこと

同じ総時間を、数週間に散らす

同じ時間でも、一晩に固めるより二週間に散らしたほうが、結果は概してよくなります。これは非常に安定した現象で、学習について安心して頼れる数少ない規則性のひとつです。運用は雑でかまいません。今日やって、明日もう一度、二日後、一週間後、一か月後。精密さは要りません。要るのは「だんだん間隔をあける」ことだけです。

寝ること

睡眠と記憶の定着の関係は長く研究されていて、仕組みについてはいまも見解が分かれます。ただ「一晩あけてから測ると安定していることが多い」という結果は、多くの実験で見られます。実務的な意味はひとつだけです——寝る前に一度、翌朝もう一度思い出す、という配置は費用がほとんどかからない。

意味とリズムが肩代わりしてくれる

人はランダムな文字列は覚えられませんが、歌なら覚えます。意味とリズムがそれ自体で構造を与えているからです。次の語は任意ではなく、前の部分に縛られています。

King James Version が記憶に残りやすいのは、この点が大きい。たとえば "Thy word is a lamp unto my feet, and a light unto my path."(詩編119:105)。あなたの言葉は足もとを照らすともしびで、道を照らす光だ、というほどの意味です。英語として声に出したときのリズムが、そのまま記憶の手すりになります。

ですから覚えはじめる前に、一分だけ使って、この文が何を言っているのか、誰が誰に言っているのかを確かめてください。理解は暗記の前準備ではなく、暗記の効率そのものです。意味の分からない文を覚えるのは、文字列を覚えるのと同じ作業になります。

声に出す、ゆっくり

声に出すと発音・聴覚・リズムが同時に働いて、手がかりが増えます。それ以上に、覚えていない箇所が露見します。黙読では脳が勝手に穴を埋めますが、声に出すと埋められません。

長い節は切る

一度に扱える要素の数は限られているので、長い文はいくつかに切って、別々に覚えてからつなぎます。切る位置は文字数ではなく意味で決めます。詰まる場所はほぼ必ず継ぎ目なので、最後に継ぎ目だけを何度か練習してください。

日本語話者にとっての、実際の難しさ

これは言い訳ではなく、最初から見積もりに入れておくべき費用です。

そのまま使える手順

  1. 一度に一節だけ。多くて二節。欲張るのがいちばんよくある失敗です。
  2. 初日:意味をとる。前後を一節ずつ読み、誰が誰に言っているかを確かめる。そのうえで声に出してゆっくり五回。
  3. 初日の終わりに:画面を伏せて、何も見ずに言ってみる。出てこなければ一度見て、また試す。この「試す」が練習です。
  4. 二日後、四日後、八日後、二週間後、一か月後に一回ずつ思い出す。毎回、まず見ずに言ってから確認する。
  5. 一か月は同じ節のまま替えない。本当の進歩はたいてい退屈に見えます。
  6. 毎回声に出し、書名と章節も一緒に言う。
  7. 途切れたら、ひとつ前の間隔からやり直す。最初からやり直す必要はないし、記録をつける必要もありません。ここに壊せる連続記録はありません。

Glow にできること、できないこと

できないほうから。Glow に暗記機能はありません。カードも、復習スケジュールも、本文を隠して思い出させるモードもありませんし、今日どの節を復習すべきかを知らせることもできません——通知そのものが入っていないからです。上の手順は、紙なりどこかなりで自分で回すことになります。ここはごまかさずに書いておきます。

できることは三つ。ひとつ、気に入った節を保存しておけるので、翌日ちがう節が出てきても見失いません。ふたつ、読み上げがあるので、「声に出す」工程を自分で読まなくても始められます。みっつ、節の下に自分の言葉で一行書けます。「この文は何を言っているのか」を書くのは、まさに最初の「意味をとる」工程で、しかも半年後にはその一行のほうが本文より雄弁なことがよくあります。

ついでにもうひとつ。聖書全巻がアプリの中にあり、マイページから入れるので、前後を確かめたいときに別のところを探しに行かずに済みます。通信もしません。

よくある質問

毎日ちがう聖句を読むのではだめですか

だめではありませんが、それは「触れること」であって暗記ではありません。記憶に必要なのは、少ない本文がくり返し戻ってくることです。毎日替えると、どの節も一度しか会わないことになります。覚えるのが目的なら、一節を一か月置くほうが、一か月で三十節に触れるよりずっと残ります。

一節を覚えるには何回復習すればいいですか

信頼できる数字はありません。文の長さ、意味をとれているか、どの言語か、で変わります。信頼できるのは形のほうです。初日・二日後・四日後・八日後・二週間後・一か月後というように、だんだん間隔をあけるほうが、同じ回数を一週間に固めるよりはるかに効きます。

黙読と音読で違いますか

違います。声に出すと発音・聴覚・リズムが同時に働いて手がかりが増えますし、黙読では脳が勝手に埋めてしまう欠落が、音読では埋められません。つまり音読は点検も兼ねています。

長い聖句の途中でいつも詰まります

意味の切れ目でいくつかに分け、別々に覚えてからつないでください。詰まる場所はほぼ必ず継ぎ目なので、最後に継ぎ目だけを何度か練習します。

Glow は暗記に使えますか

暗記機能はありません。カードも復習スケジュールもなく、通知も出せません。できるのは、節を保存する、読み上げる、下に自分の一行を書く、そして前後を読みたくなったらその章をそのまま開く、というところまでです。復習の間隔は自分で組むことになります。

一節だけ、まわりを空けて

Glow は画面に聖句をひとつだけ、静かに置きます。訳は King James Version、World English Bible、中国語の和合本から選べます。しばらく眺めても、読み上げさせても、手元に残しても、下に一行書いても、次へ送ってもかまいません。きちんと読みたい日のために聖書全巻もアプリの中にあります。無料、完全オフライン、アカウント不要、広告なし。

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